本1 帝国の怠慢

これは本 Advent Calendar 2017 - Adventar 1日目の記事です

この本はアメリカという帝国がアフガニスタンにおいて、自らの傲慢により、どのような判断ミスをし、自らより遥かに小国であるはずのでアフガニスタンに敗北するに至ったのかを綴るものである。

著者がCIA局員として働き始めたころ、上司の1人から度々聞かされた訓話があった。情報を処理する際のキーポイントは、まず最初に「検証可能な項目を詰める」ことである、と。検証可能な項目とは、すでにわかっている部分、すなわち機密文書がそろっている項目、経験者が存在する項目、話を聞ける現役の人物が得られる項目、さらには、メディアや学者の研究成果がまとまっている項目をい〜中略〜。上司の教えは、とにかく「検証可能な部分」を徹底的に詰めて問題の歴史と背景をつかみ、すでにわかっている項目を確定し、情報の欠けている範囲を確定し、それによって入手すべき情報をはっきりさせてから実際に問題解決に動き出せ、ということだった。

この訓話がアフガニスタン戦争において有効に活用されることがなく、帝国はどの沼の戦いへ足を踏み入れることになった。9.11が起きた直後、ブッシュ大統領は十分な情報が得られなかったため、主犯であるアルカイダの潜伏地をすでに把握していたにも関わらず、軍事行動を起こすことができなかった。この行動の遅れにより、数千のアルカイダ兵は各地に離散し、潜伏することができた。

ロシアがアフガニスタンに侵攻していた際、CIAは多くの人と金を使い、ロシアの侵攻の妨害を行っていた。この経験によりCIAは「厳格な教義を持ったイスラム教徒でも金には勝てない」と高をくくっていた。しかし、アフガニスタン紛争ではアメリカとアフガニスタンの利益が一致したため、たまたまアメリカの言いなりになったように見えていただけであった。アフガニスタン紛争終盤でもアメリカがアフガニスタンに対してソ連軍との交戦をやめるように要請したが、完全に無視をしたことからも分かる。 アフガニスタン戦争でも大量の資金を投じた北部同盟タリバンとの交戦の際、タリバン兵の脱出を手助けしたとも言われている。

アメリカは9.11の原因を民主主義や自由な社会に反発する過激なテロリストであるアルカイダの暴走と捉えていたが、真の原因はイスラエルの支持を始めとするアメリカの政策にあった。ビンラディン率いるアルカイダは常にイスラムの教義に則り、行動を行った。10億人にイスラム教徒がこれに従ったのは極めて自然なことであった。

このように帝国は対アルカイダ戦争において検証可能な項目を徹底的に詰めていくことを行わなかった。アルカイダそしてイスラム対してなんら正しい認識をすることがない状態で戦争に突入することになった。これが帝国の傲慢であった。

我々も「検証可能な項目を詰める」ことを常に考えて行く必要がある。自らが取り組む問題についてすでにわかっている項目を確定し(先行研究を洗い出し)、情報の欠けている範囲を確定し(先行研究を批判し)、それによって入手すべき情報(取り組むべき課題)をはっきりさせてから、実際に問題解決に動きだす。ということをキモに命じて研究をおこなって行かなければならない。

先行研究を一切調べずに新規生を謳う人間や、勉強もせずに研究ができるなどと豪語する人間は消えてくれ