本2 図表でみる教育 OECDインディケータ(2016年版)

 

これは本 Advent Calendar 2016 - Adventar2日目の記事です

図表でみる教育を読みました。500ページを越える大著です。ほぼ図表です。教育機会や教育成果の国際比較を行い、政策に反映させるための資料で、政策決定者や教育関係の人向けです。

この本は教育における重要な要素を測定することを目的として刊行されています。「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを目指した「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」の目標4を達成するために有益な指標が多く提供されています。

インディケータは大きく4つに分類することができます。

  • A:教育機関の成果と教育・学習の効果
  • B:教育への支出と人的資源
  • C:教育機会・在学・進学の状況
  • D:学習環境と学校組織

このうち、BとDを中心に読みました。図表を引っ張ってきたかったのですが、見つからなかったので勘弁してください。

教育からの収益:教育投資への誘因

OECD加盟国の平均の女性が高等教育を修了する場合の私的正味収益(学歴レベルが上がることによる家計の総利益と総費用の差)は、同等の学歴の男性の3分の2程度。日本は最も差が大きく、男性は女性の7倍にも及ぶ。税制や労働環境の問題で高等教育を修了したにも関わらず、フルタイムで働かない、または早期に退職するケースが多いことが影響しているようです。

私的な収益と公的な収益でそれぞれ収益率を計算していて男女ともに私的はOECD各国平均の収益率を下回っているものの公的な収益ではOECD各国の平均を大きく上回っている。公的費用の投資効率が高いように考えられる。しかし、これは罠で後で取り上げる指標からも分かるように日本の高等教育における公的支出の割合が低いだけです。高等教育の修了者は私的費用を公的利益のために投じている状況になっています。

国内総生産(GDP)に対する教育支出の割合

日本の初等中等高等教育機関に対する支出の対GDP比は4.5%でOECD平均の5.2%を下回っています。公的支出の割合は4分の3です。しかし、これも罠で初等中等教育機関高等教育機関を分けて考えないとまずいです。高等教育機関に対する支出の対GDP比は1.6%とOECD平均とほぼ等しいですが、私的支出が過半を占めます。初等中等教育機関に対する支出の対GDP比は2.9%とOECD平均の3.7%を大きく下回ります。こちらは私的支出が少なくなっています。

高等教育機関における私的支出が多いのは高い研究レベルの国家の傾向としてみられるものなのでそこまで心配することはないと思います。 しかし、世界トップクラスの教育水準を標榜する我が国がOECD平均に満たない支出というのはいささかどうなのでしょうか? まずは初等中等教育機関にもう少しお金を出してやってもいい気がします。

初等・中等教育学校の生徒の標準授業時間数

標準授業時間数についても初等・中等教育それぞれの教科別授業時間についても特筆すべきことはありません。にも関わらず日本の国語教育は非常にオワコンと言われています。授業時間は足りている。海外に比べて文学作品に偏重しているわけでもない。が、文章の書き方を学ぶことができない。一説には日本の社会人はアメリカの小学生以下の言語技術だそうです(つくばの言語技術研究所の三森さんが言っていました)。

漢字を覚えるのに授業を多くを割いているのが原因の一つではないでしょうか?家でもできることをわざわざ学校で行う弊害でしょうか。

学級規模と教員一人あたり生徒数

日本の初等中等教育機関の学級規模はOECD平均である20人前半の1.5倍程度です。しかし、教員一人当たり生徒数はOECD平均を少し下回る程度で大きく変わりません。むしろ、設備などの問題で学級規模を縮小出来ない可能性もあります。

教員の給与

教員の給与はどこの国でも少ないです。ルクセンブルクギリシャイスラエルなどを除けば。日本はほかの国に比べて勤続年数と給与の相関が強く、勤続年数の多い教員を多く抱えることは支出を大きく増やすことに繋がります。Teach for JapanのようなNPOは2年間の任期の講師を公立学校に派遣する事業を行っています。このように教員としてのキャリアを進まない人を活用することで教育水準を向上させつつ、支出を抑えることもできるのではないでしょうか。どの国においても教員の高齢化は問題視されています。


いくつか興味を持った指標について取り上げてきました。こうゆう統計を読んだりするのも楽しいですね。このOECDの図表でみる教育は是非教育関係者各位は読み込んでほしいと思います。SFCにたくさんいますよね?教育系の人々は